SlashDataは、開発者調査レポート「State of the Developer Nation」の中から、開発者の生成AI導入状況の調査結果をブログで紹介した。それによると、アプリケーションに生成AI機能を追加している開発者は全体の20%だった。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
SlashDataは2025年5月、ソフトウェア開発者の現状調査レポート「State of the Developer Nation 29th Edition」の中から、開発者の生成AI(人工知能)導入状況の調査結果をブログで紹介した。同調査は、2025年第1四半期に世界127カ国の開発者を対象に実施し、1万500人以上から有効回答を得た。
SlashDataは、どのような開発者が先行して生成AIを導入しているのかを明らかにするため、導入状況を「プロフェッショナル開発者(以下、プロ開発者)とホビイスト(趣味でコーディングをする開発者)/学生」「開発経験年数」「地域」「所属企業の規模」の観点から掘り下げて調査結果を分析した。
アプリケーションに生成AI機能を追加している開発者は全体の20%だった。プロ開発者は全体平均より高い22%だが、ホビイスト/学生は11%と全体平均を大きく下回っている。
SlashDataはこの差について、「インフラとツールへのアクセスのしやすさ」「イノベーションを求める組織的圧力」「高機能なアプリケーションを作るインセンティブ」といった要因に起因する可能性があると分析している。
プロ開発者は多くの場合、アプリケーションに高い機能性、パフォーマンス、競争優位が要求される環境で働いており、これらはいずれも生成AIが貢献できる分野だ。これに対し、ホビイスト/学生は、利用できるリソースが限られていたり、複雑な技術を探求するインセンティブが少なかったりする可能性があると、SlashDataは説明している。
生成AI機能の導入率は、経験年数6〜10年の開発者が最も高く(26%)、3〜5年の経験者がこれに続いている(23%)。この「中堅」グループは以下の要因から、生成AI機能を導入しやすい立場にある。
これに対し、ジュニア開発者(経験年数1年未満)は最も導入率が低く(11%)、これはスキル不足と、プロジェクトで簡単な領域を担当していることが原因と考えられる。経験年数11年以上の開発者も導入率が低い(17%)が、これは「管理的または監督的な業務に就いているからではないかと」SlashDataは指摘している。
所属企業の規模別に開発者の生成AI機能の導入率を見ると、中規模企業(従業員数101〜1000人)が最も高い(29%)。「中規模企業はイノベーションに投資する資金力と、迅速に行動する俊敏性のバランスが取れていると」SlashDataは指摘する。
大企業(従業員数1001人以上)はこれより導入率が少し低く(24%)、SlashDataによるとこれは官僚主義的な惰性やレガシーシステムに起因する可能性があるという。フリーランサーと小規模企業は13〜16%と大きく後れを取っており、SlashDataはその要因として、利用可能なインフラや時間の制約を挙げている。
SlashDataは、開発者の80%はまだ生成AI機能を導入しておらず、「導入はまだ初期段階であり、生成AIを提供する側は、慎重なターゲティングが必要だ」と述べている。
さらにSlashDataは、技術的な複雑さ、不明確なユースケース、リソースの制約など、原因が何であれ、多くの開発者が生成AIの導入に依然として慎重だが、それは合理的だとの見方も示す。生成AIには、コスト、実装、倫理、データプライバシーに関する課題があるからだ。
「AIを万能ソリューションとして扱ってはならない。使う側は、誇大宣伝に踊らされず、個別の導入パターンを踏まえて、適用領域、社内へのメッセージ発信、製品機能を調整すべきだ」(SlashData)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.