「Windows 10」のサポート終了が迫り、Windows 10から11へのアップグレードは「待ったなし!」の状態だ。そこで、Windows 10から11にアップグレードする方法やWindows 11のシステム要件を満たさないPCの対処方法について整理してみた。まだWindows 10から11へアップグレードしていない人は、これを参考にWindows 11へのアップグレードを検討してほしい。
「Windows 10」のサポート終了が2025年10月14日(米国時間)に迫り、もはやWindows 10から11へのアップグレードは「待ったなし!」の状態だ。Windows 10 The Latest「Windows 10のサポート終了でどんな影響があるか、対策はあるか、ユーザー視点で考える」で解説しているように、Windows 10のサポートが終了したからといって、その時点で使えなくなるわけではない。
しかし、サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムの無償提供が終了してしまうため、攻撃を受けるリスクは日々高まることになる。なるべく早く、Windows 11へのアップグレードや買い替えを検討すべきだろう。
そこで、本稿ではWindows 10から11へのアップグレードについて改めて整理してみた。
原則としてWindows 10は、Windows 11に無償アップグレードが可能だ。しかし、最低システム要件が下表のように引き上げられているため、全てのPCでWindows 11にできるわけではない。実際には、対応プロセッサも細かく決められており、だいたい2018年以前に発売されたPCはアップグレードの対象外となっている。
項目 | Windows 10 | Windows 11 |
---|---|---|
プロセッサ | 1GHz以上のプロセッサ/SoC | 1GHz以上で2コア以上の64bit互換プロセッサ/SoC |
メモリ | 1GB(32bit版)/2GB(64bit版)以上 | 4GB以上 |
ストレージ | 16GB(32bit版)/32GB(64bit版)以上 | 64GB以上 |
ファームウェア | − | UEFI、セキュアブート対応 |
TPM | − | TPMバージョン2.0 |
グラフィックス | DirectX 9 以上(WDDM 1.0ドライバ)対応 | DirectX 12以上(WDDM 2.0ドライバ)対応 |
ディスプレイ | 800×600ドット | 対角サイズ9インチ以上で8bitカラーの高解像度(720p) |
プロセッサごとの要件は以下のMicrosoftのWebページに記載されている。
とはいえ、上記の情報をつぶさにチェックしながら、自分のPCがWindows 11に対応しているかどうかを確認するのは容易ではないだろう。
Windows 11にアップグレード可能かどうかは、Microsoftが提供している「PC正常性チェックアプリ」を使うと簡単に確認可能だ。Windows 11にアップグレードする際には、このチェックアプリで互換性を確認する必要があるので、事前にチェックしておけばアップグレードもスムーズに進む。
PC正常性チェックアプリは、Microsoftの「PC正常性チェックアプリの使用方法」ページの中ほどにある「https://aka.ms/GetPCHealthCheckApp」リンクをクリックすると、インストーラー「WindowsPCHealthCheckSetup.msi」が自動的にダウンロードされるので、これを実行してインストールすればよい。
PC正常性チェックアプリを起動すると、「PC正常性を一目で確認」画面が表示されるので、ここの「Windows 11のご紹介」欄にある[今すぐチェック]ボタンをクリックすれば互換性のチェックが実行される。「このPCはWindows 11の要件を満たしています」と表示されれば、Windows 11へのアップグレードが可能だ。
一方で、アップグレード要件を満たしていない場合は、「このPCは現在、Windows 11システム要件を満たしていません」と表示される。この場合、[すべての結果を表示]ボタンをクリックして、満たしてない項目を確認しておこう。満たしていない項目によっては、対処できる可能性があるからだ。
PC正常性チェックアプリの結果、アップグレード要件を満たしている場合は、後述の方法でアップグレードを実行すれば、Windows 11にできる。一方、条件を満たしていない場合は、幾つかチェックすべきポイントと対処方法がある(後述)。
アップグレード要件を満たしている場合、PC正常性チェックアプリを実行してしばらくすると、「Windowsの設定」アプリの[更新とセキュリティ]−[Windows Update」を選択すると、「Windows Update」画面に「Windows 11, version 24H2の準備ができました」といった案内が表示されるはずだ。ここで、[ダウンロードしてインストール]ボタンをクリックすると、Windows 11へのアップグレードが実行される。
また、更新プログラムの適用後にサインインすると、全画面で「サポート終了の前に今すぐPCをアップグレードしてください」という案内が表示されることがある。ここで[取得する]ボタンをクリックすれば、Windows 11へのアップグレードがすぐに実行される。
ここで[スケジュールする]ボタンをクリックすると、[デスクトップにアクセスしてから数分後にインストールする]と[次の24時間以内にPCが次回更新プログラムを確認する際にインストールする]の選択肢が表示され、インストール時期が選択できるようになる。どちらの場合もインストール自体はバックグラウンドで実行され、再起動が必要になった時点で通知が表示される。再起動後、Windows 11のインストールが実行される。
いずれの場合でも、Windows 11へのアップグレードはそれなりの時間がかかる上、Windows 11にアップグレード後にWindows 10から引き継がれない項目の設定やWindows 11独自の設定が必要になるので、時間に余裕のある時に実行するのがよい。
PC正常性チェックアプリの結果、アップグレード要件を満していなかった場合でも諦めるのは少し早い。満たしていない項目によっては、対処できる可能性があるからだ。
CPUが要件を満たさない場合、要件チェックをバイパスしてWindows 11にするか、PCを買い替えることになる。デスクトップPCでは、CPUの交換が可能なものもあるが、要件を満たさないようなCPUの場合、置き換え可能なCPUで要件を満たすものを探すのは難しいだろう(チップセットが対応していないため)。マザーボードごと交換となると、実質的にほぼPCの買い替えとなってしまう。
メモリ容量やストレージ容量がシステム要件を満たさない場合、交換や増設ができるのであれば、Windows 11にアップグレードできる可能性がある。特にストレージ容量は、外付けのUSBディスクでも構わないので簡単に対応可能だ。
メモリを4GB以上、ストレージの全容量を64GB以上にして、再度、「PC正常性チェックアプリ」を実行して、システム要件をパスすることを確認しよう(アップグレードするためには、10GB以上の空き容量が必要)。
2022年以降に販売されたPCは、Windows 11の提供開始後ということもあり、ほとんどがTPM 2.0に対応していると思われる。また、それより以前であっても、Windows 11でサポートされているCPUであれば、CPUとチップセットでTPM 2.0に対応しているものが多いはずだ。
そのため、「PC正常性チェックアプリ」の結果でTPM 2.0のみ満たさない場合は、UEFI(BIOS)でTPM 2.0が無効化されている可能性が考えられる。
[Shift]キーを押しながら[再起動]を実行して表示される「Windows回復環境」画面を開き、[トラブルシューティング]−[UEFIファームウェアの設定]を選択して、UEFI画面を開く。
TPM 2.0の有効/無効を設定する項目は機種ごとに異なるが、[Security]タブにあることが多いようだ。筆者の手元にある第6世代のThinkpad X1 Carbon(Intel Core i5-8250U)の場合、[Security]タブの[Security Chip]で設定が可能であった。ここの「TPM 2.0」欄を[Enable]にして再起動すれば、TPM 2.0が有効化できる。
一方、筆者が購入した別の小型ノートPCは、2020年発売の比較的新しいCPU「Core i3-1110G4」を搭載するものの、UEFI画面にTPM 2.0に関する項目はなく、TPM 2.0が有効にできないものだった。このようなケースもあるので、メーカーのサポートページなどを確認して、TPM 2.0に対応しているかどうかを確認するとよい。
TPM 2.0がサポートされていない場合も、要件チェックをバイパスしてWindows 11にするか、PCを買い替えることになる。
未対応PCであっても、要件チェックをバイパスしてWindows 11にアップグレードすることは可能だ。ただし、アップグレード後の動作は保証されていない点に注意してほしい。また未対応PCの場合、Windows 11の機能更新プログラムはWindows Updateで適用できず、毎回手動による適用が必要になる(Tech TIPS「互換性チェックをバイパスしてシステム要件を満たさないPCでもWindows 11 2024 Update(バージョン24H2)にする」参照のこと)。
未対応PCをWindows 11にアップグレードする場合、操作ミスによってデータが失われてしまう危険性があるので、必ずバックアップを取っておこう。バックアップの方法は、Tech TIPS「Windows 10のサポート終了に備えて、Windows 11移行前にフルバックアップを実行する」を参照してほしい。
アップグレードする方法は幾つかあるが、ここでは一番簡単なsetup.exeに「/product server」オプションを付けて実行する方法を紹介しておこう。その他の方法は、Tech TIPS「システム要件を満たさないPCをWindows 11 2023 Update(23H2)にアップデートする方法」を参照してほしい。Windows 10をWindows 11 2023 Updateや2024 Updateにする場合も同じ方法でアップグレード可能だ。
システム要件を満たさないPCをWindows 11にアップグレードする場合、要件チェックをバイパスする必要がある。それには、システムイメージ(ISOファイル)を利用する必要がある。
MicrosoftのWebサイトからWindows 11のシステムイメージをダウンロードしておこう。Webブラウザで、「Windows 11をダウンロードする」ページを開き、「x64デバイス用Windows 11 ディスク イメージ (ISO) をダウンロードする」欄の「ダウンロードを選択」と表示されたプルダウンリストで[Windows 11(x64 デバイス用のマルチエディション ISO)]を選択し、[ダウンロード]ボタンをクリックする。
「製品の言語の選択」欄が表示されるので、ここで[日本語]を選択し、[確認]ボタンをクリックすると、[64-bitダウンロード]ボタンが表示されるので、これをクリックする。これでダウンロードフォルダにISOファイルが保存されているはずだ。
ISOファイルがダウンロードできたら、エクスプローラーでこれをダブルクリックしてE:ドライブなどにマウントする。エクスプローラーでマウントしたドライブを開いてから、アドレスバーに「cmd」と入力して、[Enter]キーを押して、コマンドプロンプトを開く。
コマンドプロンプトで、以下のコマンドを実行して、インストールウィザードを起動する。開いたウィザードのセットアップ画面には、「Windows Serverのインストール」と表示されるが、Windows Serverがインストールされるわけではないので気にする必要はない。
setup.exe /product server
後は、ウィザードを通常通り進めていけば、Windows 11にアップグレードできる。なお、ウィザードの途中で「引き継ぐ項目を選んでください」画面が表示されるので、ここでは必ず「ファイル、設定、アプリを保持する」を選択して[次へ]ボタンをクリックすること。「何もしない」を選択すると、個人用ファイルなどを削除して、クリーンインストールと同様の状態になってしまうので注意してほしい。
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